ナイルデルタで川とともに暮らす人々(1)
ナイル川の分流の一つ、ロゼッタ支流。
それが地中海に流れ込む河口にある町がロゼッタです。
エジプトでは「ラシード」と呼ばれます。
「ロゼッタ」ときいて、聞き慣れたかんじがするのは、ここでかの有名な「ロゼッタ・ストーン」が発見されたからです。
ロゼッタ付近には、一族単位で生け簀を所有し、魚の養殖を営んでいる漁師さんたちがいます。
とても人懐っこい漁師さんたちで、生け簀のひとつに手漕ぎボートで案内してくれました。
稚魚を追い込みで捕まえて、生け簀で育てているんだそうです。
魚のえさはパン。
小舟の上に乗せた白い袋に、餌となるパンが入っています。
生け簀の上には小屋も建てられており、成長したボラが盗まれないよう、夜間も必ず誰かが泊まり込んで番をしているんだそうです。
番犬として犬を飼っている人もいました。
ロゼッタから1時間ほど川をさかのぼったところでは、漁船を作る家族に出会いました。
水辺に漁船の工房があり、そのすぐ後ろが煉瓦造りの自宅になっていました。
船1艘を1カ月かけて完成させるんだそうです。
「船の材料の木材の価格も高くなっている今日、生活は決して楽ではないんだ」
「でも、祖父も、父も、自分と同じ仕事をしてきた。おそらく、息子たちもここで暮らし、漁船を造り続けるだろう」
そう言った男性の笑顔は、とても明るくて、とても素敵でした。
カイロの都市部とは全く異なる暮らしですが、
「エジプトはナイルの賜物」の言葉どおり、
ナイルの恩恵を受けながら、ナイルと寄り添って暮らすエジプト人の姿には、ちょっと感動でした。