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モンテネグロのオストログ修道院

首都ポドゴリツァから北西に向かう国道M18号線を車で走りました。
まぶしいほどの青空の下、周囲にはブドウ畑や小麦畑が広がります。

岩肌をくりぬいて作られたトンネルを超え、風の心地よさから徐々に高度が上がっていくのが感じられます。

途中、裸足で坂道を上っていく人たちをたくさん見かけました。

坂を上っていく人たちが目指していたのは、そう、ここ、オストログ修道院です。


標高800メートル、九十九折の坂道を延々と上った先の長い階段の末に、この修道院はあります。

修道院の入口付近では、たくさんの人が毛布を敷いて休んでいました。
モンテネグロの近隣諸国から巡礼に来た人達はこの場所で祈り、修道院の傍で2日間を過ごした後にそれぞれ帰途につくんだそうです。

断崖絶壁に埋め込まれたように建つ白亜のオストログ修道院は、ダニロヴグラード自治体内に位置し、聖母被昇天教会と聖十字架教会という二つの教会で構成されています。モンテネグロ最大のキリスト教の聖地であり、世界中から毎年10万とも100万ともいわれる人々が巡礼に訪れます。


修道院は17世紀に聖ヴァシリエというひとりの修道士によって築かれました。それ以降、俗世と切り離されたこの土地で、多くの修道士が祈りを捧げてきました。

岩間から湧き出る聖なる水。この水を飲むだけで、身も心も洗われ、それまでその人の起こった忌わしい出来事をすべて洗い流してくれるんだそうです。
裸足でここまで上ってきた人たちは、新しい人生を切り開く願掛けをしているのです。

こんな小さな巡礼者が昼寝から目覚めました。

セルビアからやってきた家族です。数年前から今回の巡礼を計画していて、やっと実現したんだそうです。
「ここで、マケドニアから来た巡礼者と知り合うことができたんだ。ここは『世界の窓』のような場所だよ」
長男がそう語ってくれました。

教会から山の下を見下ろした風景です。

「オスマントルコ時代、セルビア正教徒は、山の上のより高い所へ隠れるようにストーンハウスを築き、周囲の山を工夫して開墾して、自分たちの命と生活、信仰を数世紀の間守って来たんですよ」
そう話してくださったのはポドゴリツァからやって来た日帰りの巡礼者です。


山の下からは上にある修道院も民家も畑も見えず、木々が隠れ蓑の役目を果たしてくれたそうです。

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