イスタンブールの「アヤソフィヤ」
ヨーロッパとアジアの間に位置するトルコ最大の都市イスタンブール。
その旧市街の歴史的建造物群は、「イスタンブール歴史地域(Historic Areas of Istanbul)」としてユネスコの世界文化遺産に登録されています。
その中には、オスマン帝国の歴代皇帝が暮らした「トプカプ宮殿」や、16世紀の大建築家ミマール・シナンが設計した「スレイマニエ・モスク・コンプレックス」などが含まれています。
特に、「トプカプ宮殿」のあるスルタンアフメト地区には、「ブルーモスク」として知られる「スルタンアフメト・モスク」や地下貯水池「バシリカ・シスタン」など重要な建造物が集中していますが、中でも、東ローマ帝国の首都「コンスタンティノープル」であった時代から現在にいたるまで、ボスポラス海峡とイスタンブールの町を見守り続けてきた「アヤソフィヤ」は特別な存在です。
直径31mの巨大なドームを頂くこのバシリカ式聖堂は、世界の建築史の流れにおいても最も重要な建築の一つです。
余談ですが、カイロのシタデルにある「ムハンマド・アリー・モスク」は、イスタンブールから建築家を招いて19世紀に建てられたもので、アヤソフィヤなどのイスタンブールのモスクを倣ったデザインとなっており、エジプトにおいては珍しい外観となっています。
現在のアヤソフィヤは、最初の聖堂の焼失後の537年に、ユスティニアヌス帝によって再建されたものです。
キリスト教の大聖堂として誕生したアヤソフィヤですが、東ローマ帝国が滅びオスマン帝国の首都となった1453年以降は、イスラム教のモスクとして使用されるようになりました。
アヤソフィヤの4本のミナレットは、その時代に建てられたものです。
また、20世紀、オスマントルコ滅亡後世俗化したトルコにおいては、宗教施設ではなく博物館として85年間使用されました。
さらに、3年前の2020年からは、再びモスクとして使用されるようになりました。
※モスクへの変更に関しては、立場によりさまざまな意見があります。
エルドアン大統領は「アヤソフィアはこれからも宗教や国籍にかかわらず、あらゆる訪問者を受け入れる」と発表しており、現在も内部を観光することができます。
モスク内は、観光用のエリアと礼拝用のエリアに仕切りで分けられていました。
この写真を撮った直後、観光客が礼拝用エリアに入ってしまったのですが、すぐさま警備員が駆け付けて、注意を促していました。
礼拝中の男性を気遣っての行動だったようです。
モスクの出口付近には、様々な言語のパンフレットやクルアーンの解釈本の配布コーナーが設置されています。
スタッフの方によると、「より多くの人にイスラムに触れてほしいという思いがあるから」とのこと。
その願い通り、コーナーは多くの観光客でにぎわっており、ほとんどの人がパンフレットを手にして出口に向かっていきました。
時代によってさまざまな役割を担ってきたアヤソフィヤ。
だからこそ、今後も、ムスリムと非ムスリムが、互いを尊重しつつ、文化や歴史に思いをはせることができる空間であり続けてほしいと願います。