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ユネスコ「世界遺産」創設のきっかけとなったアブシンベル神殿

エジプトのアブシンベル神殿は古代エジプト史上最も偉大なファラオとされるラムセス2世が建てた岩窟神殿です。
建設王と呼ばれた彼の偉業は今でもエジプトじゅうに多く遺されていますが、なかでも、エジプト南端のヌビア地方に建てられたこのアブシンベル神殿はその頂点に位置すると言えます。
ラムセス2世は、66年という長い期間エジプトを統治し、92歳という天寿を全うしたファラオでした。

神殿の前には全長550㎞のナセル湖が広がっています。
この神殿は、1960年代以前は、今とは違う場所にありました。
当時、神殿は、アスワンハイダムの建設に伴い水没の危機に直面していました。

それを救ったのが世界初のユネスコによる救済キャンペーンでした。
おかげで、フィラエ島のイシス神殿などとともに移転保存が行われ、私たちは今もこの神殿の姿を見ることができているのです。
このアブシンベル神殿救済以降、「人類共通の遺産を守ろう」という機運が高まり、1972年の「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」採択へとつながりました。

当時の奇跡の救出劇については、2019年のNHKのテレビ番組で詳しく取り上げています。
◇『アナザーストーリーズ運命の分岐点』
巨大遺跡“引越し”大作戦~エジプト アブ・シンベル神殿

この番組の撮影では、アブシンベル神殿を水没から救った功労者の一人である当時の文化大臣「サルワト・オカーシャ氏」を知る人たちのインタビューを行いました。
アブシンベル神殿近くのビジターセンターには、神殿移転事業に功績のあった人物として、オカーシャ氏の胸像が設置されています。
この番組の撮影のために、「サルワト・オカーシャ氏」について詳しく調べ、多くの関係者に連絡を取ったので、彼やその家族のことをとても身近に感じています。

アブシンベル神殿は、ラムセス2世を記念した「大神殿」とハトホル神とラムセス2世の王妃ネフェルタリに捧げられた「小神殿」の2つからなります。
よく目にするこの写真が大神殿のファサードです↓

大神殿の正面には、高さ20メートルを超える青年期から壮年期までのラムセス2世の座像が4体並んでいます

また、この大神殿には、特筆すべき神秘が隠されています。
大神殿の最も奥にある至聖所には、4体の神像(太陽神ラー・ホルアクティ神、神格化されたラムセス2世像、2本の羽をいただくアメン・ラー像、エジプト最古の王都メンフィスの主神プタハ神)が彫られているのですが、1年に2度だけ、入口から差し込む朝日が神殿最奥の至聖所にまで届き、4体の神像のうち闇の神プタハ神を除く3体を順番に照らしていくように設計されています。
古代エジプトの天文学者や建築家の独創的なアイデアですが、3000年以上も前に、巨大建造物にこんな繊細な仕掛けを施せる高度な建築技術があったことには心底驚かされます。
そして、さらに驚かされるのは、20世紀に行われた移築の際にも、年に2回起こるこの現象が変わらず起こるように設置されたことです。
今でも、アブシンベルでは、年に2回(2月22日前後と10月22日前後)、この現象がみられ、その時に『サン・フェスティバル』というお祭りが開催されています。

一枚岩に彫られた世界最大級のアブシンベル神殿にまつわる奇跡の話は尽きません。

そうそう、余談ですが、フジテレビの夏クールのドラマ「ビリオン×スクール」の主題歌が流れるシーンで、主人公の先生役、山田涼介さんのバックに毎回一瞬このアブシンベル大神殿のファサードが映ります。
放送はもう終わってしまいましたが、再放送か配信があるかもしれませんので、ちょっと気に留めておいてください。
本当の余談でした(笑)。

では、また。

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