イスラムの聖地「メッカ」での撮影
昨年6月、NHKの番組『サウジアラビア千夜一夜 ~サヘル・ローズ メッカへの旅~』のロケで、イスラムの大巡礼「ハッジ」の期間中に、聖地「メッカ」を訪れました。
「メッカ」にはイスラム教徒しか入ることができません。
そのため、メッカに入る撮影チームはイスラム教徒だけで構成されることになります。
大巡礼「ハッジ」とは、イスラムの五行の一つ。しかし、実現のハードルの高さは人によって異なります。
ですので、あくまで、費用や体力や時間などの条件が整い、可能になった場合の義務ということになります。
ハッジは、イスラム教徒によって重要な義務であると同時に、大きな願望でもあります。
「死ぬまでに絶対に行きたい」と心から願う場所なのです。
とはいえ、行きたい人がすべて行けるわけではなく、毎年受け入れ人数は限られています。
新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前は、毎年世界中から200万人を超えるイスラム教徒がハッジに参加していましたが、コロナ禍の2020年と2021年は、サウジアラビア国内の条件を満たす人だけの参加となり、規模も大きく縮小されました。
その後、2022年になって海外からの受け入れが再開され、NHKのロケを行った2023年には世界中から180万人の巡礼者が訪れました。
ハッジは、メッカとその周辺で、決まったスケジュールで行われる一連の儀礼です。
カアバの周りを7回周るタワーフという儀式もその一つ。
夜のタワーフの様子↓
ハッジの2日目には、巡礼者は、聖モスクから東に25㎞離れたアラファに集まり1日祈りを捧げます。
中央奥にあるのがラフマ山です。
この日は、すさまじい暑さだったため、救急車で運ばれた人も多くいました。
巡礼者が滞在するミナーには数知れないテントが立ち並びます。
石投げの儀礼を行うジャマラートへ向かう通路は、近代的に整備されています。
ですので、車いすでも移動しやすくなっています。
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ハッジはイスラム暦の第12月「ズー・アル・ヒッジャ」に行われます。
イスラム暦は太陰暦ですので、西暦でいうと毎年10日ほど早まることになります。
ちなみに、2023年と2024年のハッジは6月で、暑い時期でした。
2023年もかなり暑かったのですが、今年2024年は50度を超す酷暑に見舞われ、1000人以上の人が命を落としたことをニュースで耳にした方も多いのではないかと思います。
ハッジの参加者は、すべて無料で医療を受けられます。
しかし、サウジアラビアの保健相からの発表によると、死者の約83%が当局の正式な巡礼許可を受けていなかったそうです。
また、亡くなった人の多くがエジプト人でした。
エジプト国内では、巡礼者の旅行を違法に斡旋していた16の旅行会社に対して、免許剥奪などの処分が下されたこともニュースになりました。
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そうした過酷さも時としてあるのですが、やはりイスラム教徒にとってハッジは唯一無二のもの。
参加した人からは「生まれ変わったような気がする」という感想をよく聞きます。
来年のハッジに参加する人々がどうか安全に最後までやり遂げられますように!