モロッコの世界遺産『アイット・ベン・ハドゥの集落』
現在、フランス・パリのユネスコ本部で、第47回世界遺産委員会の会議が開催されています。
日本関連では、軍艦島(2015年に世界遺産に登録された『明治日本の産業革命遺産 ~製鉄・製鋼、造船、石炭産業~』の構成要素のひとつ)をめぐる日韓の異なる主張に対する投票結果について報道があったばかりです。
世界遺産の登録には、歴史的な要因だけでなく、政治的、経済的な要因が影響していることはしばしば指摘されています。
ユネスコの世界遺産に登録されることで世界的な認知度が上がることは確かです。
それが登録の本来の目的である「人類共通の財産として、損傷や破壊から保護し、保存すること」につながっていくといいですね。
前置きはそれくらいにして、今日ご紹介するのは、モロッコ南部、ワルザザート近郊にある『アイット・ベン・ハドゥの集落』です。

1987年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
(※2025年6月末現在、登録されているモロッコの世界遺産は9件です。今年の世界遺産委員会の会議でノミネートされているモロッコの物件はありません。)
アイット・ベン・ハドゥの集落は、アフリカの北の屋根アトラス山中に暮らし、独自の生活文化を築いてきたベルベル人たちがオウニラ渓谷に造った堅固な要塞村「クサール」のひとつです。
日干しレンガの建物が丘陵地に密集し、周囲の茶褐色の風景と同化したこの美しい集落は、数々の映画やドラマのロケ地にもなりました。
ベルベル人たちは、アトラスを越えて地中海とサハラ砂漠を結ぶ交易ルートを通るキャラバンからとる通行料など富を得て、高い壁や見張り塔を持つ土の城「カスバ」を築きました。
要塞村は、そうしたカスバや質素な住居群、モスクや広場などの共用空間などで構成されています。
外敵の侵入を防ぐため、集落全体が壁で囲まれています。入り組んだ通路、銃眼が設置された外壁、篭城に備えた食料庫も要塞として重要なものです。
現在、以前の居住者のほとんどは、川向こうにできた村に居住場所を移していますが、新しい住人である彼は、自然の恵みと現代技術の両方を利用しながら、日中だけここのクサールで生活をしているんだそうです。

↑特別な場所での読書
ここからアイット・ベン・ハドゥのクサールと川向こうにある新しい集落が見える

↑貯めた太陽光のエネルギーで稼働する電気

↑橋を渡っていざクサールへ

↑クサールの入口へ向かう

↑観光客の向けのお店がある

↑使用されている建築材料は今も土と木材。
分厚い日干しレンガの壁に囲まれた住宅の中庭や塔。