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アブシンベル大神殿で起こる年2回の神秘現象

10月22日。
エジプト、アブシンベルの太陽祭(サンフェスティバル)の日。

毎年2月22日と10月22日の2回、アブシンベル大神殿で神秘的な現象が起こる、今日がその日です。

この現象をみようと世界じゅうから観光客がやってきます。
夜明け前から、ヌビアの伝統的な音楽とダンスのパフォーマンスが始まり、エジプト料理が販売され、まさに「お祭り」。


日の出直後、大神殿の入口に届いた朝の太陽光は、ゆっくりと神殿の通路を通って奥深くまで進み、60メートル奥の至聖所に置かれているラー・ホルアクティ神、神格化されたラムセス2世、アメン・ラー神の3つの像を次々に照らします。
しかし、4体目の闇の神プタハには届きません。
3つの神像に朝日があたり、闇の神の像だけが暗がりにあるという現象が起こります。
そうした光景が見られるのは20分ほど。

↓普通の日のアブシンベル大神殿の至聖所(下の写真は2025年5月の撮影)


驚くべきは、アブシンベル大神殿が建設されたのが紀元前1260年頃、つまり3200年以上であり、その時にこうした現象が起こるよう設計されたということ。
当時は現代のような道具や技術がなかったにもかかわらず、緻密な建設技術と天文学の深い知識によって正確な配置を実現したのです。

時のファラオはラムセス2世。
現在「建築王」「最も偉大な王」と呼ばれている古代エジプト新王国時代のファラオです。
アブシンベル大神殿のファサードには、高さ20メートルを超える青年期から老年期までのラムセス2世の座像が4体並んでいます。


驚くべきはこれだけではありません。
現在のアブシンベル大神殿は、実は、20世紀に移築されたものなのです。

1960年代、エジプトは、アスワンハイダムの建設に着手しました。
そのため、アブシンベル神殿など古代の遺跡のいくつかがナセル湖に沈もうとしていました。
この水没の危機に対して、世界の人々が手をつなぐことに。

1964年から1968年にかけて、アブシンベル神殿は、国際的な協力のもと、高台に移築されました。
まずは1000個以上の巨大なブロックに切り分けられ、65メートル高く200メートル後退した移転場所で組み立て直す、そうした途方もない作業が行われたのです。

このアブシンベル大神殿の救出の成功がきっかけで、ユネスコの世界遺産が生まれたというのは有名な話です。

移築の際に、年に2回太陽光が3つの像を照らすという現象が維持されるよう、綿密に計算されました。
おかげで、3200年前に計画されたその現象を、現代の私たちが同じように体験するという「神秘」が起こっています。


今日10月22日は、古代エジプトから現代まで時間と空間が確かにつながっていること、それぞれの時代の人間ができる限りの知恵を絞ったことを実感できる日だと言えそうです。

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